横浜で開催される第16回国際嗜癖医学会
厚生労働省の皆さんへのメッセージ
この日本において、ベンゾジアゼピン系薬剤を含む向精神薬の不適切な処方により、甚大な被害が引き起こされています。実際に、私のところには、多くの薬害被害者から、必死に助けを求めてSOSのメッセージが送られてきます。
日本は、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方について諸外国のような適切なガイドラインを策定しておらず、また、医療従事者にも適切な教育がなされていません。そのため、多くの医師はベンゾジアゼピン系薬剤の中毒性や離脱について殆ど何も知りません。依存症に苦しむ患者は救済されることはなく、多くが路頭に迷い独りでもがき苦しんでいます。その被害者の皆さんが、同じく被害者であるこの私に助けを求めるという事実こそが、今の医療システムに大きな欠陥のあることを明確に物語っています。
何故、私のような一般の英語講師である外国人が、国のやるべき救済を求められるのでしょうか?ベンゾジアゼピン処方薬依存が引き起こす問題は、国民の生命と財産に関わる非常に深刻なものです。早急に、国が、ガイドラインの策定、医療従事者の教育、薬物離脱専門治療施設の設立など、適切な対策と対応を講じる必要のあることに疑いの余地はありません。
注 記
私の母国語は英語であり日本語ではないことから、日本語の使い方が不自然な点があるかもしれませんが、どうかご容赦ください。
今年10月2日から6日まで、第16回国際嗜癖医学会(International Society of Addiction Medicine, ISAM)年次総会がパシフィコ横浜会議センターにおいて開催されました。
ベンゾジアゼピン系薬剤および類似薬剤の“不適切な処方”による危険性について注意喚起をするため、2014年10月6日に、私は発表する機会がありました。
これは、薬害体験者が実際に経験したことについて語る貴重な機会になったと思います。自分の経験はもちろんのことですが、これに加えて取り上げるべく地球規模の問題点についても紹介することもできました。このように、今回の発表は自分の経験を通して様々な問題を紹介するものになりました。
最後に、問題改善になるという思いを込めて、「問題要約および改善への提言」というセクションも書きました。
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ジェイムズ・ドビンさんありがとう
この場をお借りして、英国の政治家亡き Rt. Hon. James Dobbin へ哀悼の意を捧げます。2014年9月6日に永眠されました。
彼は、処方薬物のより安全なガイドラインや患者の権利、適切な治療のために不断の努力を尽くされました。The Conservative Woman magazine で記念の記事を読むことができます。
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私の講演
キーワード:ベンゾジアゼピン(BZ)、処方、医原性、中毒性、依存症、離脱、有害作用、“不適切な処方”、依存症の誤診、社会経済コスト、エピデミック(流行病)
序文:下記の5点(多くの医者が理解していないもの)については、私自身の経験を通して紹介しますが、事件後の裁判も紹介し、これもまた社会が本当に守られているのかという更なる疑問を投げ掛けます。
背景:私は医者ではありません。ニュージーランドから来た英語講師・翻訳者です。日本(東京)で医原性BZ依存症という最悪の経験を実際に受けたのです。自分の経験やその後の研究を通じて、この問題は世界的にも非常に多くの人達に悪影響を与えているとのことが解りました。
目的:BZ系薬剤および類似薬剤の“不適切な処方”による危険性を明確にさせること。
方法:実際の依存症経験、実際の観察(他人)、アシュトンマニュアル和訳作成の協力から得た知識、文献レビュー、依存症に悩まされている人たちの助けや、医者・専門家との協力による経験。
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- 比較:「BZから離脱させることは、ヘロインから離脱させるよりも困難である。」(Lader M, 1999) 1
- 耐性と依存症形成速度:「もしBZが定期的に2~4週間以上にわたり服用される場合は、耐性と依存が生じる可能性がある。最小投与量はない。」(Ashton H, 2009) 2 「離脱症状(例、反跳不眠)は、推奨用量(臨床用量)を僅か1週間の治療後に中断した場合にも生じ得る。」(Biovail, 2007) 3
- ガイドライン:「英国医薬品安全委員会(Committee on Safety of Medicines)および英国精神医学会(The Royal College of Psychiatrists in the UK)は、様々な声明の中で(1988年、1992年)、「BZは長期使用に不適当であり、一般に2~4週間に限ってのみ処方されるべきである」との結論を下しました。」(Ashton H, 2002) 4
- 定義:「一般的に、“長期間”とは、推奨期間(2~4週間)以上の意味をします。」(Ashton H, 2012) 5
- 日本のガイドライン:なし(添付説明書も不十分)。
*その他各国の処方ガイドラインについてはウィキペディアに掲載されています。
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- 主訴:急性回転性眩暈発作
- 処方:3 BZ + 1 SSRI(期間:減薬段階を含め10ヶ月)
- 義務:インフォームド・コンセントまた依存形成について適切な経過観察はなかった。
- 適合性:専門による検証のとおり、私に実際に発症していた「前庭神経炎」の場合でも、誤診された「中脳水道症候群」の場合でも、この薬を処方することは全く不適切な治療であった。
- 内服開始約2週間後の時点:いくつかの症状の落ち着きがみられた。
- 内服開始約2ヶ月後の時点:症状がぶり返し・悪化(例:筋肉緊張)、また以前はなかった新たな症状も出現し始まった(例:動悸)。
- 内服開始約4~6ヶ月後の時点:多くの症状が新たに出現した。例:頻脈、胸部への圧迫感、ほてり、口の渇き、味覚異常、胃痛、性欲減弱、パニック発作、朦朧・引き離されている感じ(感情麻痺)、混乱、気分の著しい動揺、攻撃性、けいれん発作を起こしそうになる感じまた気が狂いそうになる感じ、光に対する過敏症の増加(飛蚊症を伴う)、閃光、過度の残像、視覚がコマ送りに見えること、ジストニア(顎が閉じられないほど)など。(減薬・離脱中、これらの症状がまた激しさを増し、さらに新しい症状も出現した)
- 重要点:「耐性が形成されると、たとえ薬を飲み続けていたとしても、服用中に“離脱”症状が出現します。このように、多くの長期(1.4)服用者が苦しんでいる症状は、薬の有害作用と、耐性からくる離脱作用が混ざり合ったものです。(Ashton H, 2002) 4
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ヘロイン離脱後60日 ベンゾジアゼピン離脱後600日
ベンゾジアゼピンが市場に出された1960年以来、ヘロイン離脱が楽勝に思えるようになりました。
- 比較:「ヘロインの場合、離脱症状は、通常一週間程度で終わるが、BZの場合、一部の患者は、長期に及ぶ離脱に移行することである。私のもとには、離脱症状は2年以上も続くことがあると訴える人たちから手紙が届く。いくつかのトランキライザー自助グループには、断薬後10年経過しても依然として離脱が続いている人たちを記録していることもある。」(Lader M, 1999) 1
- 臨床研究:スウェーデンの医師たちが行った最近の調査によると、その調査が終了した断薬後1年の時点においても、依然として、多くの離脱症状が持続していることが示された。またその調査報告論文では、改善がみられるのに断薬後5年以上も要した遷延性の離脱症状に関する報告についても言及されている。(Vikander B et al., 2010) 6
- 調査:離脱症状の持続期間を調査した報告書では、激しい離脱症状のために調査をドロップアウトした患者の後の経験が除外されていたり、調査が短期間で打ち切られて、残存する症状や離脱症状の再発(recurrence)が無視されたりしているため、離脱症状の持続期間が過小評価されていることが指摘されている。(Ashton H, 1995) 7
- 私の場合:断薬した最初の年に、殆どの離脱症状が改善したが、いくつかの症状、特にパニック発作は何年も残続した。時には離脱症状の再発も出現し、本当の自分を完全に取り戻すのに、およそ10年間がかかった。
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不適切な処方は多くの人の人生を破壊している
- 過小評価:「ベンゾジアゼピン離脱は深刻な疾患である。患者はたいてい恐怖に怯え、しばしば激しい痛みに晒され、偽りなく疲弊し切っている。この疾患の激しさや持続期間は医療従事者や看護師から過小評価されやすく、彼らは禁断症状を“神経症(neurotic)”によるものと簡単に片付けようとする傾向がある。実際は、患者に落ち度はないにも拘わらず、彼らは多大な心身の苦痛に悩まされている。」(Ashton H, 1984) 8
- 反跳vs.離脱:多くの医師は離脱反応を“反跳反応”として簡単に片付けており、反跳反応なら問題はないという先入観を持っているようである。「反跳反応と離脱反応を区別する文献作者もいますが、いずれの機序は同じです。」(Ashton H, Lader M, 1991) 9
- 不適切対応:治療中、減薬中、断薬後の各段階において、依存症を誤診し、さらに不適切な処方をする医者は多い。助けを求めようとする患者をしかりつける医者の事例もある。(Satoh M, 2012) 10
- 私の場合:私が薬剤治療から脱け出そうと別の病院を再び紹介してもらった。その結果、私が患っていた医原性BZ依存症は誤診され、また別の不適切な診断(自律神経失調症)が付けられ、そして更にBZが処方された。
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- 専門家による警告(無視):1978年、レイダー教授はベンゾジアゼピン系薬剤のことを、その非常に高い処方率から「大衆のアヘン」と呼びました。そして1981年には、精神安定剤中毒のことを指し、「現在蔓延しつつあるエピデミック(流行病)が存在する」と警告し、1988年には、「これは、20世紀後半において医療によってもたらされた最も甚大な問題である」とも述べています。(Lader M, 1978, 1981, 1988) 11
- 反応:この10年間、実際に世界の全体的増加がみられている。(INCB, 2010) 12
- 理由:「責任は誰にある?」参照。(Ashton H, 2006) 13
- 日本の平均消費量:国際麻薬統制委員会2010年報告書によると、日本におけるBZ系“抗不安薬”の平均消費量は、アジアの中では2番目に多く、BZ系“催眠鎮静薬”の平均消費量は、全世界では2番目に多い。(INCB, 2010) 12
- 変数:エチゾラム(デパス)は上記報告書には含まれていないことが確認されており、エチゾラムを含めると、日本のBZ消費量は世界最多となる可能性が高いと予想されている。(Toda, 2013) 14
図1:BZ系“催眠鎮静薬”の平均消費量1997-1999年および2007-2009年(出典:INCB2010年報告書)
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図2:日米欧における“抗不安薬”の処方件数1998年(村崎,2001年よりデータを引用)
- 日本の処方件数:上記のグラフは田島治教授の2001年の論文に掲載されているもので、同教授は「これをみるとわが国におけるBZ系抗不安薬の突出した処方頻度の高さが目立つ。処方件数でみるとわが国は欧米各国の6~20倍で…」と述べている。(Tajima O, 2001) 15
- メタ分析:BZを含めた鎮静薬・睡眠薬・抗不安薬の物質使用障害罹患者の自殺リスクは20倍にもなるとされており(Harris EC, Barraclough B, 1997) 16、このメタ分析は日本の厚生労働省が支援した研究報告書でも引用されている。(Matsumoto T, 2010) 17
- データ、マスコミ、法律の矛盾点:
(A) マスコミで報告されているデータは選択的調査によるもの。
(B) 多くのケースが報告されていない。
(C) 事件があった時、マスコミは合法薬(処方薬)の関係には言及しない。
(D) 処方薬こそが、実際の薬物乱用の入口となり得る。
(E) 日本は飲酒運転のいかなる違反も許さないが、BZ系薬剤やその他の向精神薬服用中の運転は大丈夫?
- 社会経済コスト:「社会経済コスト」参照。(Ashton H, 2002) 4
- 重要点:「世界で起きている最も大きな薬物中毒(薬物依存)の問題とは、ヘロインやコカイン、マリファナのことではない。実は、違法薬物では全くないのだ。世界で最も大きな薬物中毒問題はベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬剤によって引き起こされている。この系統の薬剤は世界中で、医師によって広く処方され、見当もつかない甚大な数にのぼる全く正常な人たちが摂取している。」(Coleman V, 1985) 18
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厚生省や医者たちは知らずに中毒者を作り出している
一般的に、もしBZが定期的に2~4週間以上にわたり服用される場合は、耐性と依存が生じる可能性があります。
これらのプロセスによりいくつかの症状パターンが複合的に出現します。(1)耐性により症状のぶり返し。また同時に、(2)依存症により元々の症状の悪化や投薬前にはみられなかった全く新しい症状の出現。これらの症状は、服用中、減薬中、また断薬後に生じ得る。
医師や弁護士や裁判などが必ずしもこの現象を認識しているとは限りませんので、依存症が認められないケースも多くあるしょう。
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上記の5点を含めBZ系薬剤の適切な規制、離脱治療、離脱施設などが不足しているため、医原性BZ依存症(中毒)は大変深刻な問題になり続いています。この問題の規模や重篤度が医療界や政府規制当局にもかなり過小評価されています。
この悲劇が何十年も続いてきました。何百万という人々が、様々な医者に、様々な(不適切)理由で、この殆ど不必要且つ危険な薬物(BZ系薬剤)を長期に亘り処方されています。実に沢山の人たちが、自分たちに処方されている薬がBZ系薬剤であるということさえ知らずに、この薬を疑うことなく飲んでいます。また、多くの人たちが自分に実際に起きている疾患の原因(依存症)やなぜ起きているのかは解らないまま独りで苦しんでいます。彼らには助けを求める所はありません。ひいては、社会にも深刻な影響を与えているのである。
BZ系薬剤依存症はまさに世界的な問題であり、緊急事態で、皆一人一人は直ちに対応にあたる必要があります。
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専門家は意見を述べた。この問題の対策は急務!
- 薬に頼りすぎ → 学校での教育、生活改善。
- 過剰診断/誤診 → 患者の声に耳を傾ける。
- 過剰処方/不適切な処方 → 適合したガイドラインを導入。、非薬物療法を探る。
- 知識[認識]不足 → 医者・医療従事者への教育。
- 技術を持ったスタッフの不足 → 適合した訓練の提供(カウンセラーなど向け)
- 適切な治療場はない → BZの専門離脱施設の設立。
- 規模および重篤度の無理解 → 全面的調査を徹底的に実施すること。
- 汚名 → 教育、偏見のないマスコミ。
- ひねくれた見方・意見 → 偏見のないマスコミ。
- 就労能力・社会生活能力の喪失 → 患者・被害者への適切な損害賠償、社会復帰のリハビリテーションや職業再訓練など。
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下記の方々に謝辞を述べたいと思います。
- 亡きRt. Hon. James Dobbin(処方薬物のより安全なガイドラインや患者の権利、適切な治療のために不断の努力を尽くされました)。
- アシュトン教授、レイダー教授(貴重なアドバイス)。
- グレアム・ジャドスン医師(継続的なサポート)。
- パートアルバイトの雇用者(アドバイスや休職許可)。
- お祖母さん(本日2014年10月6日の97歳の誕生日おめでとうございます)。
- お母さん(ずっと揺るがぬ支えになってありがとうございます)。
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- Lader M. Benzodiazepines [Radio broadcast]. Face the Facts. London: BBC Radio 4; 1999 Mar 16.
- Ashton H. Literature Translations. E-mail to Wayne Douglas 2009 Mar 24.
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- Ashton H. Benzodiazepines: How They Work and How to Withdraw. Rev 2002; 15.
- Ashton H. Confirmation (Long-term). E-mail to Wayne Douglas 2012 Aug 26.
- Vikander B, Koechling UM, Borg S, Tönne U, Hiltunen AJ. Benzodiazepine tapering: A prospective study. Nord J Psychiatry 2010; 64: 273–281.
- Ashton H. Protracted Withdrawal Symptoms from Benzodiazepines: The Post-withdrawal Syndrome. Psychiatric Annals 1995; 25: 174-179.
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- Ashton H. Protracted Withdrawal Syndromes from Benzodiazepines 1991; 8: 19-28.
- 佐藤光展 (読売新聞東京本社). 精神医療ダークサイド. 東京:講談社現代新書;2013. (Sato M, Yomiuri Newspaper reporter. The Dark Side of Mental Health. Tokyo: Kodansha 2013; 266.
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- Ashton H. History of Medicines Involuntary Addiction [Presentation]. APRIL Charity Conference. Vancouver, BC: 2006 Apr 4.
- 戸田克広. ベンゾジアゼピンによる副作用と常用量依存. 臨床精神薬理 16: 867-878, 2013. (Toda K. Clinical Psychopharmacology: Benzodiazepine Side Effects & Therapeutic Dose Dependency 2013; 16: 867-878.)
- 田島治:ベンゾジアゼピン系薬物の処方を再考する.臨床精神医学 30: 1065-1069, 2001. (Tajima O. Clinical Psychiatry: Reconsidering prescriptions of benzodiazepines 2001; 30: 1065-1069.) 村崎光邦:わが国における向精神薬の現状と展望 -21世紀を目指して-. 臨床精神薬理 4: 3-27, 2001. (Murasaki M. Clinical Psychopharmacology: Present situation and new prospects of psychotropic drugs in Japan – Towards the 21th century – 2001; 4: 3-27.)
- Harris EC, Barraclough B. Suicide as an outcome for mental disorders: A meta-analysis. Br J Psychiatry 1997; 170: 205-28.
- 松本俊彦. 薬物依存者・アルコール依存者の自殺の実態解明と自殺予防に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書 2010; 41-55. (Matsumoto T. Suicide in Drug Dependents & Alcoholics: Suicide Prevention Research. Health and Labour Sciences Research Grant Joint Funded Report 2010; 41-55.)
- Coleman V. Life Without Tranquillisers. Essex: Piatkus Books; 1985.
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追 補
注 記
社会が本当に守られているのかという更なる疑問を投げ掛けるために、下記のとおり、私の裁判も追補として紹介しています。
社会が本当に守られているのか
(実例:私の場合)
主な経過
2003年2月: 訴訟準備開始。
2006年2月: 東京簡易裁判所で、私はひとりで民事調停を申し立て、最初は弁護士を立てずに自力だけで病院側との口頭弁論を始めた。
2007年6月: 東京地方裁判所で第1審開始。
2008年9月: 住む場所も仕事もお金もないまま、原告本人尋問のために再び日本に戻ってきた。
2009年9月: 東京高等裁判所で第2審開始。
2011年5月: 最高裁判所に上告した時(東日本大震災の最中)も弁護士を立てずに自力で手続きをした。そこまで行ったところで、この闘いは終わった。
2011年11月: 最高裁判所の決定が下された。
主な証拠
本件は、主に各患者カルテおよびDSM-IV-TR 薬物依存(物質依存)診断基準に基づいた。
主な争点
全く不適切なことに、本件は、私の症状が医原性BZ系薬剤依存症であったのか、または「自律神経失調症」であったのかを証明する裁判となった。
定 義
「自律神経失調症」とは日本で一般的に使用される診断用語であり、次の場合ではよく使われているようです。(A)心因性の症状であり、さまざまなストレスや不安から引き起こされる。(B)種々の自律神経系の不定愁訴であり、特に原疾患を特定できない場合に用いられる。
注意点
BZ依存症おおび離脱反応により、私の神経系全体のシステムの活動が亢進していたので、この主張は、全く非論理的なものであった。(「自律神経失調症」参照)。
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東京高等裁判所の判決
- 診断基準不採用:判決書では、3つの基準が無視され、その結果、私がDSM-IV-TR の診断基準に適合する薬物依存であったという事実を除外していない。このDSM-IV-TR基準が、本訴訟全体の基礎になっていた。
- 証拠を間違えて引用:高等裁判所の判決は「各添付文書には大量連用により薬物依存が生ずる可能性があることの記載があるのみであり」ということになりましたが、「大量投与又は連用中」という記載もありました。
- 臨床的関連情報不採用:例、以前は神経性疾患、精神性疾患などの病歴は一切なかった事実、断薬と減薬を試みるが何度も失敗した事実、薬剤治療開始前には、まだ就労能力があったが、薬剤治療を受けてからは就労能力を失い、また離脱治療後には、再び就労能力を取り戻した事実など。
- 選択的症状分析:裁判は私が依存状態にあったか否かという判断については、全体を見ようとせずに、大幅に省略し抜き出された特定の一部分だけの症状を基づいた。
- 離脱症状不採用:離脱治療施設のカルテに記録された新たな症状について、裁判官は決して取り上げようとしなかった。例、ミオクローヌス反射、筋肉運動協調の喪失、顔面のピリピリ感、頭部の筋肉の硬直(頭の周りをバンドできつく縛られた感覚)、油っぽい体臭 – 腺の反応など。
- 事実と異なる解釈:裁判所は、私が処方されたベンゾジアゼピンの用量が、治療中、ずっと同じであり、また薬物の増量を求めなかったことから、私には耐性が形成されておらず、よって中毒ではなかったと結論付けた。しかしながら、この見解は当方の主張と相反するものである。当方は「治療中に、薬物の増量を求めること」ではなく、「治療中に、離脱症状を生じていたこと」を耐性の根拠として主張していた。このことから、 DSM-IV-TRの診断基準4 「制御不能」が本件に適用されたが、判決でこの事実は無視された。
- 非科学的な用語(診断名)採用:「自律神経失調症」という別の診断を下すことに、薬物依存症を除外するための妥当な医学的・科学的根拠は存在しないも拘らず、裁判所は、私の薬物依存を否定する決定的な要因としてこの診断を認めた。
- 経過関連事実否認:例、BZ系薬剤の投与開始から6ヵ月後の時点で、初めて、自律神経失調症という診断が付けられた事実。
- 事実関係の誤り:BZ依存症(中毒)自体がストレスや不安症また自律神経の亢進およびそれに伴う関連症状を引き起こす(所謂自律神経失調症)。
- 偏った情報採用:高裁が、中毒を引き起こすとみなされるBZの用量を決める際には、製薬会社が作成した添付文書(多くの欠点に満ちたもの)に信用を置いた。
- 信憑性の高い証拠不作用:臨床用量の投与といえども2週間から4週間以上定常的に服用しているとBZ依存症に陥ってしまう可能性が十分にあること、そして実際に依存症に陥ってしまう事実が記載されている余地のない専門家による証拠を無視した。
- 証人尋問申請却下:当方の重要な証人である依存症の診断医(薬物中毒治療科医長)の証人尋問を2回申請したにも拘わらず、その申請は正当な根拠が示されることもないまま却下され裁判が続いた。
- 説明義務違反の不合理な反論:被告医師が下した元診断「中脳水道症候群」と、その当時に処方された薬剤は整合性が取れないのだが、裁判官はその矛盾は追及することはなかった。それどころか、「自律神経失調症」についても、同被告医師が裁判開始前にはその診断をしたことがなく、裁判開始後になって初めて主張し出したのだという事実も顧みられることはまるでなかった。
- 経過観察義務違反の不合理な反論:裁判官は、「平衡感覚を観察するための定期検査」と、「服用中に起こり得る依存形成について適切な経過観察」の違いを区別しなかった。
- 欠陥を有する裁判:訴訟中に裁判長の交代があった。その結果、本件について詳しい裁判長の代わりに、本訴訟の経過やBZ系薬剤についての基礎知識を全く持っていない新しい裁判長が途中で本訴訟を引き継ぐことになってしまった。
- 関連事実の除外:注目すべき点は、考えられないほどに強烈なストレスであるはずの日本での裁判手続きの期間中でも私の健康状態はどんどん良い方向へ向かっていったこと。私の健康状態を示すこの事実は、私の症状が単に不安神経症/ストレス(自律神経失調症)からくるものであり、また私にはその体質であるとする被控訴人側の主張を覆すに十分なもの。その理由、ストレス(自律神経失調症)になりやすい体質で、ストレスに苦しんでいる人が強烈なストレス環境の中で健康状態が回復するなんてことはあり得ないからである。これでは全く理屈に合わない。この事実も判決には含まれていなかった。
- 最終弁論:最終陳述書の末尾に、「9ヶ月間に渡り、中毒性の強いBZを処方内服された後、私は薬物中毒リハビリ施設で治療を受けることになった理由は何だと思っていますか?」と質問を投げかけた。答えはないまま裁判は終わってしまった。
詳しいこと:(「裁きは公正ですか?参照」)。
(世界のトップ2の専門家は?)
BZ治療中及び投与量の減量中、また断薬後にみられた、ウェイン・ダグラスの症状(ジャドソン医師の報告書に記録されている)のほとんど全ては、依存症及び自律神経系の活動亢進によるものであり、これらは、このような状況でよく起こるものである。ヘザー・アシュトン教授(英国、ニューカッスル・アポン・タイン大学名誉教授、臨床精神薬理学)
親愛なるウェイン、あなたは間違えなく裁判による誤審を受けました。深く同情する次第です。敬具、マルコム・レイダー教授。大英勲章第4位、法学士、博士号、医学士、科学博士、英国精神医学会フェロー、英国医学アカデミーフェロー。英国ロンドン大学精神医学研究所名誉教授(臨床精神薬理学)。
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ザ・ジャパン・ドリーム: 日本における国際交流・国際関係の仕事をすること。
その献身: 大学日本語科卒業、日本語能力試験1級合格、マネジメント(人間関係、コミュニケーションズ)資格獲得、16年間日本に滞在し、政府機関において国際関係の仕事に従事してきた。
途中で: 急性回転性眩暈発作に襲われた。
システムの障害1: 医療システム(上記1~5参照)。
システムの障害2: 司法システム(上記参照)。
システムの障害3: 政府(政策・方針の問題)
その結果: 48歳の今、私には、家、家族、貯金、財産、生活の安定など、全く何もない。あるものといえば、未返済の借金(教育費)と裁判費用のみ。自分が何も悪いことはしていないのに、異国の地から出られないという状況を強いられ、周りに支えのないとても辛い一人暮らしの生活を余儀なくされている。
注: 当学会の参加費用やウェッブサイトの構築費用の返済は未だに出来ていない。
公営住宅の前で
(長野県松本市)
小さな一例:殆ど必要ないこの非常に危険なドラッグの「不適切な処方」、薬害、システムの障害により多くの人たちが計り知れないほど苦しんでいる。健康的で(薬害を別にして)、教育を受けて能力あるごく普通の人たちが見捨てられている。私のストーリーは、いかにBZ系薬剤が破壊的になり得るかということを示すほんの小さな一例を過ぎない。この問題は社会全体に非常に大きな影響を与えている。
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裁判終了後、また3.11の災害による影響がある程度落ち着いてから、福島からの避難生活をしながら、BZ処方薬の危険性の注意喚起をし、また必要情報などを少しでも提供するため、Benzo Case Japanのウェッブサイトを立ち上げました。当サイトは下記の内容を含む。例:
- アシュトンマニュアル(英語版・日本語版)。
- BZ依存症のチェックポイントの一覧。
- 3.11の被災者のための注意喚起・情報提供。これが全ての災害・戦闘地域に当てはまるでしょう。
- 私のストーリー(ジャパンタイムズ参照)。
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当サイトは、医原性ベンゾジアゼピン薬物依存症(中毒)の注意喚起、また、医療訴訟の問題について知っていただくために、個人的に作成したものです。
当サイトには報復的な目的は一切ありません。また、プライバシー保護のため、当サイトに掲載される公的資料からは、被告人またはその他関係者の名前は削除されています。
当サイトには私以外に関係する個人や団体は無く、また、特定の組織や社会運動を代表するものでも一切ありません。
当サイトは医療的あるいは法的な助言を目的としたものではありません(免責条項参照)。
このサイトの一部はまだ日本語に翻訳されていない部分があります
「ベンゾジアゼピンを飲むと災難がやって来る。」
アンドルー・バーン医師
オーストラリア, NSW, レッドファーン
ベンゾジアゼピン依存 (1997)
「もし何かの薬を飲み続け、それが長い長い災難をもたらし、あなたからアイデンティティをまさに奪い去ろうとしているのなら、その薬はベンゾジアゼピンに違いない。」
ジョン・マースデン医師
ロンドン大学精神医学研究所
2007年11月1日
「我々の社会において、ベンゾは他の何よりも、苦痛を増し、より不幸にし、より多くの損害をもたらす。」
フィリップ・ウーラス下院議員
英国下院副議長
オールダムクロニクルOldham Chronicle (2004年2月12日)
「ベンゾジアゼピン系薬剤はおそらく、これまでで最も中毒性の高い薬物であろう。これらの薬を大量に処方してきた途方もなく大勢の熱狂的な医師達が、世界最大の薬物中毒問題を引き起こしてきたのだ。」
薬という神話 (1992)
「薬があれば、製薬会社はそれを使える病気を見つける。」
ジェレミー・ローランス (ジャーナリスト)
インディペンデント紙 (2002年4月17日)
「製薬会社に対して、彼らの製造する薬について公正な評価を期待することは、ビール会社にアルコール依存に関する教えを期待するのと同じようなものである。」
マーシャ・エンジェル医師
医学専門誌"New England Journal of Medicine"元編集長
「ベンゾジアゼピンから離脱させることは、ヘロインから離脱させるよりも困難である。」
マルコム・レイダー教授
ロンドン大学精神医学研究所
BBC Radio 4, Face The Facts
1999年3月16日
「長期服用者のうち15%の人たちに、離脱症状が数ヶ月あるいは数年持続することがある。中には、慢性使用の結果、長期に及ぶ障害が引き起こされる場合もあり、これは永続的な障害である可能性がある。」
ヘザー・アシュトン教授
医学博士、名誉教授
Good Housekeeping (2003年)
「クロノピン(クロナゼパム)とは恐ろしい、危険なドラッグだ。」
この気の毒な問題に取り組む全ての関係者は、トランキライザー被害者の為に正義を提供するよう努めるべきである。
「'benzo.org.uk'というサイトは実に素晴らしい。」
マーシン・スライズ
ロシュ社ポーランド 製品マネージャー
私はもともと、ベンゾジアゼピン処方による被害にあい、その上に東日本大震災にもあいました。震災にあった時に心配になったことは、トラウマに悩まされている被災地の多くの人たちが、ベンゾジアゼピンの処方をたくさん受けているのではないかということでした(今も心配しています)。
大震災の最中に、私はちょうど最高裁への上告理由書を書いていたところでした。せっかくでしたので、その機会を借りて、警鐘を鳴らそうと思い、下記の文を補記しました…
国際麻薬統制委員会2010年報告書によると、日本におけるベンゾジアゼピン系“抗不安薬(anxiolytic)”の平均消費量は、欧州各国の多くよりも少ないものの、アジアの中ではイランに次いで最も多い(35頁、Figure 20参照)。
一方、日本のベンゾジアゼピン系“催眠鎮静薬(sedative-hypnotic)”の平均消費量は、ベルギーを除くと世界のどの国よりも多い(39頁、Figure 26参照)。
興味を持っていただけそうなベンゾジアゼピン関連のニュース動画をいくつか紹介しています。
アシュトンマニュアル:世界的な専門家、ヘザー・アシュトン教授によって書かれた、ベンゾジアゼピン系薬剤と離脱法についての解説書。
このマニュアル内で示された離脱スケジュールは単に“一般的な指針”を示すために作成されたものであることを、あなたの処方医に伝えることが大切です。離脱の経験は人それぞれで、同じものがない。離脱の経過は多くのファクター(要因)に影響されるからです。
臨床用量のベンゾでは中毒にならないと思っていませんか?
考え直しましょう!
“もしベンゾジアゼピンが定期的に2~4週間以上にわたり服用されるならば、耐性と依存が生じる可能性がある。最小投与量はなく、例えば耐性と依存は2.5mg~5mgのジアゼピンの定期的な服用後に見られたこともある。”
ヘザー・アシュトン教授(英国、ニューカッスル・アポン・タイン大学名誉教授、臨床精神薬理学)。
I went from being barely able to walk when I was on benzodiazepines to being able to squat 180kgs following abstinence and rehabilitation.
What are benzos for again?
The only time I’ve ever needed to visit a psychologist in my life was AFTER (wrongfully) being prescribed benzodiazepines…
Seems people are all saying the same things over and over…
- I was like a zombie
- It felt like I was in hell
- It was much harder to come off benzodiazepines than anything else I'd ever had before
- It took a chunk of my life away
- It has destroyed my life
- The doctor never told me they were addictive / The doctor told me they weren’t addictive
- When I complained my condition was worsening the doctor prescribed me more...
Cause for Alarm!
Consider this extract from:
A Review of David Healy's “The Psycho-pharmacologists III” by Professor Heather Ashton
How is it that the pharmaceutical industry has come to dominate the field?
Healy points out that drug companies “are now not simply confined to finding drugs for diseases. They have the power to all but find diseases to suit the drugs they have”.
Pierre Simon (Sanofi Pharmaceuticals) remarks: “In the beginning the pharmaceutical industry was run by chemists.
This was not so bad... Now most of them are run by people with MBAs... people who could be the chief executive of Renault, Volvo or anything.
They don't know anything about drugs.” The problem comes when a chemist presents an interesting drug to the financial analyst, who asks: “What is the market?”
The chemist has to decide for what indication the drug will be developed. If the indication is not there, it must be created.
It was difficult to get any relief from the ongoing symptoms
Unlike injuries where you may get some relief from adjusting your posture etc, with drug dependency in my case, the pain was both mental and physical and ran 24/7 regardless…
In my case, “confusion” appeared to be the main tactic of choice employed by the defense.
Enter the term “Autonomic Nervous Disorder” (The Perfect Smokescreen).
最も驚いたことは、高裁が、中毒を引き起こすとみなされるベンゾジアゼピンの用量を決める際、製薬会社が作成した添付文書に信用を置いたことであった。
「負けた気がしません。私は勝ち、裁判所が負けたと感じています。彼らは医師たちを守る一方、社会を守り損なったように思えます。私がやりたいことは、私の経験を紹介したり、裁判を通して集めた資料を使ったりして、依存患者や依存に陥る可能性のある人たちのために情報を提供することです」
このウエブサイトの左上に私の信条が掲げてあります。裁判を起こして活動をやり続けてきた私はクレジーだと思った人が多くいました。
しかしながら、私たちは二つの選択肢を持っている「何かをすることを選ぶ」か「何もしないことを選ぶ」-多くの人々に希望を持って生きることを与えるのはどちらでしょう?その選択権は私たちの手の中に…
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