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第3 当裁判所の判断

3.1.0 (高等裁判所の判断)

当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。そのように判断する理由は,下記2のとおり追加ないし補足するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の1項から5項まで(原判決6頁10行目から同45頁11行目まで)に説示するとおりであるから,これを引用する。


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3.2.1 (高等裁判所の判断)

控訴人は,被控訴人Xの診療中に生じた新たな症状として,熱に対して敏感になったこと(なお,乙A1のカルテ(18頁)には「熱っぽい」と記載されている。),手の異常な発汗,口の潰瘍ができやすいことを挙げ,これらはベンゾジアゼピンの耐性,退薬症候又副作用であり得ると主張する。

しかし,これらの症状は,自律神経失調症の症状としても捉えられるものである(丙B14,17。なお,控訴人は,平成12年6月30日の被控訴人Xによる診察の際に「発熱しやすい」と申告しているし(乙A1),平成11年10月ころにも手掌の発汗を訴えている(甲A23の1,2)。)。

また,口内炎,ほてり(熱感,顔面紅湖),発熱がリボトールの副作用として,発熱,ほてりがグランダキシンの副作用として上記各薬品の添付文書に記載されているが,いずれも発現率は0.1%未満にすぎない。

そして,被控訴人Xの診療期間中,控訴人に対するベンゾジアゼピン系薬物の処方量は増加することなく,通常検査,重心動揺検査等の各種検査結果も良好に推移し,控訴人にベンゾジアゼピン系薬物に対する反応が鈍麻するなどの耐性の兆候は確認されていない。

また,被控訴人Xの診療期間中,上記のとおり処方量は一定のままであり,かつ,耐性の兆候は確認されていないのであるから,その間に控訴人に退薬症候(離脱)が生じたということもできない(控訴人の手許にベンゾジアゼピン系薬物が存在しなかった間もそれによって控訴人に激しい退薬症候が生じたことを認めるに足りる証拠はない。)。

そうすると,控訴人の主張する上記の症状がベンゾジアゼピンの耐性,退薬症候又は副作用として新たに生じた症状であると直ちに認めることはできない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。


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3.2.2 (高等裁判所の判断)

控訴人は,倦怠感,めまい,ふらつき等の症状が,被控訴人Xの治療開始後に消失し,その後再燃したから,ベンゾジアゼピンの耐性の結果の症状であると主張する。

しかし,控訴人にベンゾジアゼピン系薬物に対する反応が鈍麻するなどの耐性の兆候が確認されていないことは上記のとおりである。

確かに,控訴人は,平成12年12月13日,ORC病院のK医師に対し,めまいはなくなったが,目がちかちかする,息苦しい,ふらつきなどと訴え,同月21日には,OセンターのM医師に対し,めまい,ふらつき,息苦しさ等の多様な症状を訴え,同月25日には,被控訴人Xに対し,新しい症状として記載したメモを交付している。

しかし,被控訴人Xが同日に実施した通常検査の結果は良好で,重心動揺検査では初診時よりも改善がみられたのである。

控訴人が訴えたこれらの症状は,飛文症(なお,これについてはOセンターの眼科医に生理的なものと診断されている。)以外のものは自律神経失調症として説明できるものであり,現にM医師は控訴人を自律神経失調症と診断しているところ,自律神経失調症は,症状が発現したり消失したりし,また,症状も転々と変わるというように,症状が定まらないのが一つの特徴とされているのであるから(丙B14,17),これらの症状をもってベンゾジアゼピンの耐性の結果の症状であると直ちにいうことはできないものである。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。


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3.2.3 (高等裁判所の判断)

控訴人は,ジャドスン医師による漸減療法を受けた結果,症状の一時的悪化を呈しているのであるから,ベンゾジアゼピン依存症になっていたものであると主張する。しかし,控訴人に耐性が生じていたとは認められないのであるから,漸減療法中にみられた症状の発現をもって離脱が生じたものと認めることはできない。

また,上記のような経過については自律神経失調症の症状が処方量の漸減により一時的に悪化したものの、母国に戻って精神的に安定したために,投薬を止めても症状が改善されたとみる余地もあるのであるから,控訴人が母国での漸減療法によって症状の一時的悪化をみたからといって,直ちにベンゾジアゼピン依存症に陥っていたと認めることはできない。したがって,控訴人の上記主張も採用することができない。


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3.2.4 (高等裁判所の判断)

控訴人は,ジャドスン医師の意見書をその主張の根拠としているので,以下,当審において提出された同医師の意見書について検討する。

ジャドスン医師の意見書(甲A35の1,2,甲A39の1,2)は,ベンゾジアゼピンは中毒性の高い薬剤であり,処方量にかかわりなく2~4週間以上服用すると耐性と離脱を生じる可能性があるから,2~4週間以上は処方すべきでないというベンゾジアゼピン系薬物に対する基本的理解の下に,控訴人について,治療開始後約1.5か月後に耐性の初期症状が発現したこと,治療開始後約4~6か月後に耐性と離脱に合致する新たな症状が発現したこと,ジャドスン医師の行った漸減療法により離脱がみられたことなどから,控訴人がベンゾジアゼピン依存症になったと判断するものである。

しかし,控訴人に処方されたベンゾジアゼピン系薬物であるリボトール及びコントールの各添付文書には大量連用により薬物依存が生ずる可能性があることの記載があるのみであり,臨床用量の投与による薬物依存の可能性に関する記載はないし,グランダキシンの添付文書には同薬剤自体による依存症の発生については言及されていないのであるから,原判決の説示するとおりベンゾジアゼピン系薬剤の臨床用量の服用により依存症が発生することは,我が国における医学的知見として確立していたものと認めることはできない。

また,ベンゾジアゼピン系薬物を臨床用量投与する場合でも,長期間継続すると,中断時に退薬症候がみられる可能性があるが,このような退薬症候が出現するには4ないし6か月以上の投与が必要であり,かつ,退薬症候の出現率は投与期間が8か月以上の場合は43%であるが,8か月未満の場合には5%程度であるとされているのである。

これらの点に照らすと,ジャドスン医師の意見の前提となっているベンゾジアゼピン系薬物に対する基本的理解はそもそも採用しがたいものである。

また,被控訴人Xの診療期間中に控訴人に耐性や退薬症候(離脱)が生じたということができないことや,ジャドスン医師の漸減療法中にみられた症状の発現をもって離脱が生じたものと認めることができないことは上記のとおりである。

これらの点からすると,ジャドスン医師の上記意見の判断には疑問が残るのであり,上記意見書から直ちに控訴人がベンゾジアゼピン依存症になったと認めることはできない。


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裁きは公正ですか?

  • 高等裁判所の判決における決定的な矛盾は、私がDSM-IV-TR の診断基準に適合する薬物依存であったという事実を除外していない点にあります。DSM-IV-TRは世界的にも認められている診断基準です。この DSM-IV-TR基準が、本訴訟全体の基礎になっていました。
  • 裁判官は「耐性」(基準1)と離脱症状(基準2)の2つだけにしか見解を示しませんでした。しかも、その見解はDSM-IV-TRの診断基準に基づくものではありませんでした。基準を満たしていた残る3基準については、裁判所は全く判断しないままになっています。

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  • 第1審決裁後の反証提出期限を過ぎてから、地方裁判所の裁判官は、被告側の有利になる問題を提出し、当方には反証提出の機会すら与えられなかった。
  • 東京高等裁判所の裁判官は、中毒を引き起こすとみなされるベンゾジアゼピンの用量を決める際には、製薬会社が作成した添付文書に信用を置いて、提出された十二分なまでの証拠(疑う余地のない文献や専門家の意見など)を、あろうことか、無視した。
  • 裁判では、被告医師が下した診断と、出された処方は整合性が取れないのだが、その矛盾は追及されることはなかった。
  • 判決理由の記載の中身をみると、高等裁判所は、本件に適応されたDSM-IV-TR診断基準のうち、半分以上について検討していないことは明らかである。
  • 訴訟中に裁判長の交代があった結果、本件について詳しい裁判長の代わりに、本訴訟の経過やベンゾジアゼピンについての基礎知識を全く持っていない新しい裁判長が途中で本訴訟を引き継ぐことになってしまった。

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フィリップ・ウーラス

「我々の社会において、ベンゾは他の何よりも、苦痛を増し、より不幸にし、より多くの損害をもたらす。」

フィリップ・ウーラス下院議員
英国下院副議長
オールダムクロニクルOldham Chronicle (2004年2月12日)

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このセクションでは、私が闘った日本の裁判についてお話します。特にそこで現れた、明らかに不当な処置と思われる事例のかずかずを紹介します。これらの事例をわかりやすくお伝えするために、「東京高等裁判所の判決」と「中毒治療科の報告書」への参照箇所(リンク)がいくつか出てくるので是非ご参考ください。また、「中毒治療科報告書」は、一貫して、法的証拠およびDSM-IV-TRの依存症診断基準に基づいて書かれていることにもご留意ください。

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