アシュトン教授による意見書
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上告理由書の別紙5 (和訳文)

アシュトン教授による専門家の意見)

 

注 記

この書簡は、3.11の大震災の影響を受け福島から避難中に、日本語の翻訳を依頼したものです。

そのため、内容を確認する機会は殆どなく、不自然な日本語表現があるかもしれません。不明なところがあれば、英語原文ごを参照して下さい。

 

 

別紙⑤ A

2011年2月15日(火)

ウェインさん、

貴方がまだ裁判で苦労しているようで残念に思います。ベンゾジアゼピンは、中枢神経系及び、中枢神経系に支配されている自律神経系(交感及び副交感)の両方の神経系全体に影響を及ぼします。初期効果では神経系活動を低下させますが、定期的な服用では、耐性の形成によりシステム全体の活動が亢進します。これは、処方薬が中止され、投与量が減量された場合、またベンゾジアゼピン服用中でも起こりうる離脱反応です。

ベンゾジアゼピン離脱反応による自律神経亢進で見られる症状の例を挙げると、動悸、頻脈、パニック発作、不眠症、興奮性、情緒不安、筋肉の振戦及びひきつり、発汗、寝汗、視力低下または複視、ピリピリ感、肌にむしずの走るような感覚、光、音、味覚及び臭覚の過敏症、ストレス及びその他に対する感受性の増大などがあります。

もし貴方の病歴、ベンゾジアゼピン服用前、服用中、また漸減療法時の症状を用意すれば、もっと詳しく説明します。

明日、引用文献を送ります。

ヘザー・アシュトンより


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別紙⑤ B

2011年2月15日(火)

添付のとおり、引用文献を送ります。ヘザー

References

  • Ashton, H. (2004) Benzodiazepine dependence.  In Haddad P, Dursun S, Deakin B. Adverse Syndromes and Psychiatric Drugs: A Clinical Guide. Chapter 13. pp. 239-259. Oxford Medical Publications, Oxford University Press.
  • Ashton H (1991) Protracted withdrawal syndromes from benzodiazepines.  J Subst Abuse Treat. 8, 19-28.
  • Ashton H (1995) Toxicity and adverse consequences of benzodiazepine use.  Psychiatr Ann 15; 158-165.
  • Busto U, Sellers EM, Naranjo CA et al. (1986)  Withdrawal reaction after long-term therapeutic use of benzodiazepines.  New Engl J Med 315; 654-9.
  • Murphy SM, Owen RT, Tyrer PJ. (1984)  Withdrawal symptoms after six weeks treatment with diazepam.  Lancet 2, 1389.
  • Petursson H,  Lader MH. (1981) Withdrawal from long-term benzodiazepine treatment.  BMJ 283; 634-5.
  • Tyrer P,  Rutherford D, Higgitt T. (1981) Benzodiazepine withdrawal symptoms and propranolol.  Lancet 1, 520-2.
  • Tyrer P, Owen R, Dawling S. (1983) Gradual withdrawal of diazepam after long-term therapy.  Lancet 1, 1402-6.

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別紙⑤ C

2011年2月16日(水)

ウェインさん、

病歴を無事に受けました。ありがとうございます。

すでに送った情報に加えるべき事は思いつかないです。医学文献の読者にとっては明らかであるため、ベンゾジアゼピンに関する殆どの文献は、実際、“自律神経系”には言及しません。

下記は少し役に立つかもしれません。

どの生理学の教科書にも、自律神経系(交感及び副交感)は身体のほぼ全ての臓器に影響を及ぼすことが書かれています。例えば亢進活動は下記に影響を及ばします:

腺-例:汗腺の発汗増加、腋窩汗腺増加、濃い匂い物質の分泌増加

心臓-心拍数の増加と動悸

筋肉-筋緊張亢進による凝り、筋肉のひきつり、筋肉痛等。眼筋による視力低下

肺-息苦しさ

肌-熱い感覚と冷たい感覚、及びほてり

胃腸系-食欲減退、胃痛

参照:ガイトンAC 医科生理学の教本(1986)第7版、サンダーズ&Coフィラデルフィア(日本語-第4版、東京)

ベンゾジアゼピン治療中、投与量の減量及び離脱の間における、ほぼ全てのウェイン・ダグラスの症状(ジャドソン医師の報告書に記録されている症状)は依存症及び自律神経系の活動亢進によるものであり、これはこのような状況ではよく起こることです。ダグラス氏が2000年3月に転職した後に自然に解消した身体的ストレスの軽度のエピソード以外、ベンゾジアゼピン服用以前の “Autonomic Nervous Disorder” の証拠は報告には何も見られませんでした。2000年5月の目まい発作は疑う余地もなく前庭神経炎によるもので、これはたいていウイルスが原因になります。

ヘザー・アシュトンより


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別紙⑤ D

2011年2月23日(水)

ウェインさん、

私が知る限りでは、薬物依存症のDSM IV基準はイギリス及びアメリカで全面的に受け入れられ、広く適用されています。7つの診断基準の内3つまたはそれ以上の基準が,少なくとも12カ月の期間内のどこかで充足されねばなりません。貴方はこれらの基準のうちの5つを充足しました。

西洋では、“Autonomic Nervous Disorder”という言葉は神経疾患を含む非常に多くの原因によって起こるシステム(神経系)機能低下を意味します。不安症やベンゾジアゼピン離脱において発現する自律神経系の機能亢進が “Autonomic Nervous Disorder” にあたるという両者間の関連性を見つけることはできません。

自律神経系の活動は通常、身体的及び精神的なストレスにより増加しますが、ストレスが解消されると通常の活動に戻ります。ストレスがない状況下で自律神経系の活動亢進が持続する場合にのみ、“Disorder”とみなされます。貴方のケースでは、ストレスの原因が除去さてた時、自律神経系活動亢進による症状が治まりました。私の見る限りでは、ベンゾジアゼピンを服用する以前に貴方が “Autonomic Nervous “Disorder” を患っていたという問題はまったくなく、貴方の自律神経系は単に普通に及び生理学的に反応していただけです。

自律神経系はあらゆる原因により起こる不安症やストレスに反応します。ベンゾジアゼピン耐性、依存症及び離脱の全てはストレスと不安症を発現させますので、自律神経系の反応はその他いかなる種類の不安症の反応とも同じです。しかし長期ベンゾジアゼピン服用によるストレスや不安症は数カ月または数年に渡って継続するので、結果的に自律神経系活動の症状もまた継続します。

裁判所に関心がある場合のために記すと、ベンゾジアゼピンの作用機序はリラクゼーションと落ち着きを誘発する働きをする脳の神経伝達物質であるGABA(ガンマ-アミノ酪酸)を増加させることです。この活動の耐性が発現すると、GABAの受容体が減少(下方抑制)、及びGABAの活動が減少、結果として不安症(及び自律神経系活動の増加)が起こり、これは投与量の減量及び離脱によりさらに増大します。

残念ながら、私が貴方の質問に対し答えることができるのはここまです。日本の弁護士や裁判官は自律神経系の生理学を理解していないようで心配です。

ヘザーより


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別紙⑤ E

2011年3月17日(木)

ウェイン氏へ

貴方が地震を生き延びてとてもよかったです。

私のコメントが誤解を与えるものであったならばお許しください。

自律神経の機能低下と機能亢進に関しては、まさに私が述べたとおりです。“Autonomic Nervous “Disorder” は機能低下を意味します。

例えばこの “Disorder” のある患者は、立ち上がると意識を失う場合があります。その理由は、自律神経の機能低下により、重力の変化に反応するのは遅くなるからです。その結果、血圧が低下し、起立時に失神することがあります。この “Disorder” は、さまざまな度合いの自律神経障害を示し、たいていは神経疾患によるものです。

これとは違って、ストレス状態(ベンゾジアゼピン離脱を含む)は通常、自律神経系の活動亢進を引き起こします。しかし、この機能亢進は普通であり、“Autonomic Nervous “Disorder” とは言えません。

“…there was no question that you had ..” 私がここで意味したのは、貴方がベンゾジアゼピンを服用する以前に “Autonomic Nervous “Disorder” を患っていたというのは論外だ、ということです。すなわち、貴方がそれを患っていた筈はなく、それを更に検討する価値もなく、論点でもないということです。

ヘザーより


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別紙⑤ F

2011年2月18日(金)

アシュトン教授へ

いつも大変お世話になっております。言葉を絶するほど感謝をしております。

お返事が遅くなって申し訳ございませんが、昨日、一日中、東京で上告の手続きをしておりました。

明らかに偏見があるという主な理由により、勝訴するとは思っておりませんが、自分に対する責任感また一般社会への責任感も感じております。

重ねてお礼申し上げます。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

ウェインより


2011年2月19日(土)

ウェイン氏へ

ご丁寧なお返事ありがとうございます。裁判が成功することを祈っています。

レイ・ニモー氏と私は、今も、(文献の)和訳(PDF形式)を歓迎し、これが日本の人々の啓発に役立つかもしれません。中の多くは、貴方と同じように苦しんでいるでしょう。一部の翻訳に取り掛かった日本人女性がいましたが、途中で不成立に終わりました。

これからも頑張ってください。

ヘザーより


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注 記

  • 上記の連絡また下記の連絡は、アシュトンマニュアルの和訳に言及しています。アシュトンマニュアル日本語版が2012年8月19日についに公開されました(読売新聞の記事参照)。結局、マニュアルの翻訳に取り掛かったのは、自らベンゾジアゼピン依存に苦しみ、その危険性について医療界や世間に訴える必要があると考えたひとりの日本人です。また、その翻訳は別府宏圀医師によって監修されました。別府先生はアシュトン教授も、ジャパンタイムズ記事の中で意見を述べています。
  • 同じ目的を共有するこういった人たちと知り合うことが出来て光栄です。この翻訳の最終校正を一緒に務める機会にも恵まれました。私の主な役割は微妙なニュアンスの違いについて助言したり、アシュトン教授との連絡でサポートをしたりすることでした。

 

 

別紙⑤ G

2011年4月27日(水)

ウェイン氏へ、

貴方は元気で、地震の影響によって裁判の準備が遅れていないことを祈っています。

この度は、マニュアル(Benzodiazepinesベンゾジアゼピン:How They Work and How to Withdrawal.その働きと離脱方法 C.H.アシュトン教授)の和訳については、他のふたりからの申し出があったから連絡します。 (http://www.benzo.org.uk/ashsupp11.htm) また、ベンゾ(ベンゾジアゼピン)のウェブサイト(www.benzo.org.uk.)でも入手できるマニュアルの補足(最近、執筆したもの)を翻訳したい日本人がいます。

この申し出をしてくれた人は、ベンゾジアゼピン使用により苦しい経験をしてきた日本人で、中のひとりはベンゾジアゼピン離脱症候に悩まされている人々のカウンセリングをしています。残念ながら、彼らはあまり英語ができなく、貴方ほどベンゾジアゼピンについては深く理解していないようです。

ですから、貴方は今も、マニュアルの翻訳、また補足(割と短い)の翻訳を引き受けるかどうかとの連絡をしています。そして、既に、取りかかった場合は、どこまで進んだか教えてください。また、校正できるバイリンガル医師や専門医を知っているでしょうか?あるいは、何らかの理由で貴方ができない場合、代わりに翻訳ができる医師を紹介していただけますでしょうか?

日本では、ベンゾジアゼピン処方率は非常に高く、またザナックスを例として強力なベンゾジアゼピンの使用頻度が明らかに高く、医師らの処方する期間および量は大き過ぎるので、日本の人々は、マニュアルおよび補足を入手できればお役に立つでしょう。

ヘザーより


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原本

上告書の別紙⑤の原本を見るにはここをクリックしてください。


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日本のBZ系薬剤の消費量

国際麻薬統制委員会2010年報告書によると、日本におけるベンゾジアゼピン系“抗不安薬(anxiolytic)”の平均消費量は、欧州各国の多くよりも少ないものの、アジアの中ではイランに次いで最も多い(35頁、Figure 20参照)。

一方、日本のベンゾジアゼピン系“催眠鎮静薬(sedative-hypnotic)”の平均消費量は、ベルギーを除くと世界のどの国よりも多い(39頁、Figure 26参照)。

The Ashton Manual

アシュトンマニュアル:世界的な専門家、ヘザー・アシュトン教授によって書かれた、ベンゾジアゼピン系薬剤と離脱法についての解説書。

このマニュアル内で示された離脱スケジュールは単に“一般的な指針”を示すために作成されたものであることを、あなたの処方医に伝えることが大切です。離脱の経験は人それぞれで、同じものがない。離脱の経過は多くのファクター(要因)に影響されるからです。

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臨床用量・・・

臨床用量のベンゾでは中毒にならないと思っていませんか?

考え直しましょう!

“もしベンゾジアゼピンが定期的に2~4週間以上にわたり服用されるならば、耐性と依存が生じる可能性がある。最小投与量はなく、例えば耐性と依存は2.5mg~5mgのジアゼピンの定期的な服用後に見られたこともある。”

ヘザー・アシュトン教授(英国、ニューカッスル・アポン・タイン大学名誉教授、臨床精神薬理学)。

フリートウッド・マック

スティーヴィー・ニックス: “嘘をついて”(Little Lies

医師: ベンゾジアゼピンを飲めば気分が落ち着くから、もうコカインに戻ることもないよ。

歌手のスティーヴィー・ニックスは自身のベンゾジアゼピン処方薬離脱経験を「“地獄”のようでコカインやヘロインからの離脱よりも質が悪かった」と表現しながら、クロノピン(リボトリール)の危険性を訴えています。

「クロノピンは私をゾンビにした」(スティーヴィー・ニックス, US Weekly, 2001)

ストーリーはこちらから

Language Enthusiast?

You may be interested to see the notes on corrections of Japanese translation errors, which were contained in the dependency medical report translations, together with explanations of the nature of these errors, and consider their potential implications on the case.

This is very interesting!

誤訳についてを読む

Results Speak Volumes!!

I went from being barely able to walk when I was on benzodiazepines to being able to squat 180kgs following abstinence and rehabilitation.

続きを読む

アイロニー

What are benzos for again?

The only time I’ve ever needed to visit a psychologist in my life was AFTER (wrongfully) being prescribed benzodiazepines…

Skeleton in the Closet

It seems the truths about the potential dangers of benzodiazepines are slowly coming out but with so many cases of prescription dependency worldwide there is clearly a long way to go.

Also, in my experience it appears as if dependency to prescription drugs leans toward a subject of taboo – almost as if society is succumbing to it.

However, is keeping these problems locked up in the closet going to help anyone or change anything?

At first it was difficult sharing my case and story online because it necessitated disclosing personal information, however, I felt the need to come out and help raise awareness outweighed this…

アンドルー・バーン

「ベンゾジアゼピンを飲むと災難がやって来る。」

アンドルー・バーン医師
オーストラリア, NSW, レッドファーン
ベンゾジアゼピン依存 (1997)

ジョン・マースデン

「もし何かの薬を飲み続け、それが長い長い災難をもたらし、あなたからアイデンティティをまさに奪い去ろうとしているのなら、その薬はベンゾジアゼピンに違いない。」

ジョン・マースデン医師
ロンドン大学精神医学研究所
2007年11月1日

フィリップ・ウーラス

「我々の社会において、ベンゾは他の何よりも、苦痛を増し、より不幸にし、より多くの損害をもたらす。」

フィリップ・ウーラス下院議員
英国下院副議長
オールダムクロニクルOldham Chronicle (2004年2月12日)

ヴァーノン・コールマン

「ベンゾジアゼピン系薬剤はおそらく、これまでで最も中毒性の高い薬物であろう。これらの薬を大量に処方してきた途方もなく大勢の熱狂的な医師達が、世界最大の薬物中毒問題を引き起こしてきたのだ。」

ヴァーノン・コールマン医師

薬という神話 (1992)

デイヴィッド・ブランケット

ブランケット下院議員、ベンゾジアゼピンについて語る。

「これは国家的スキャンダルである!」

デイヴィッド・ブランケット(英国下院議員)
1994年2月24日

ジェレミー・ローランス

「薬があれば、製薬会社はそれを使える病気を見つける。」

ジェレミー・ローランス (ジャーナリスト)
インディペンデント紙 (2002年4月17日)

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